金・黒・銀は表面処理の違い。フロントフォークの点サビを見つける点検手順
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この記事のバイク
Suzuki GSX-8R
先週の朝、洗車のあとにしゃがんでフロント周りを拭いていたら、インナーチューブの下のほうに小さい黒い点が3つ並んでいるのを見つけました。指で撫でるとかすかに引っかかる。点サビです。
その場では笑えなかった。ここを放っておくとオイル漏れに直結する場所だと知っていたので。今回は、その日にやった点検をそのまま手順にします。
銀・金・黒。インナーチューブの色は表面処理の違い
手順の前に、なぜここを大事に扱うのかの話を少しだけ。フロントフォークのインナーチューブは銀色が一般的ですが、あれは硬質クロムメッキです。金色や黒のインナーチューブを見かけることがありますが、あれはドレスアップの塗装ではありません。
- 銀: 硬質クロムメッキ。もっとも一般的な標準仕様
- 金: チタンコーティング。イオンプレーティングと呼ばれるPVD(真空蒸着法)で処理する。表面の面粗度が上がって伸縮時の摩擦抵抗が大きく下がり、表面硬度は硬質クロムメッキの2〜3倍。防蝕性も高くなる
- 黒: 多くはDLCコーティング(Diamond-Like Carbon)。ダイヤモンドのように硬い炭素被膜で、潤滑性・摺動性・耐摩耗性ではチタンコーティングを上回るとされる
つまりインナーチューブの表面は、メーカーが摩擦と耐久性のために作り込んだ「層」です。ここに傷やサビを作るということは、その層を壊すということ。拭き方ひとつを気にする理由がここにあります。

見た目のためだけの金色だと思ってた時期がありました。反省。
作業前チェック
項目 | 内容 |
|---|---|
難易度 | ★☆☆(目視点検と拭き取りのみなら初心者OK)/点サビの研磨まで踏み込むなら ★★☆ |
所要時間 | 点検+拭き取りで10〜15分(前後1本ずつ)。点サビの研磨まで含めると30分〜1時間 |
費用目安 | ウエスとメタルポリッシュだけなら¥1,000〜2,000/2000番の耐水ペーパーと防錆浸透オイルまで揃えて¥3,000前後。摺動面まで進んでインナーチューブ交換や再メッキになるとショップ作業で数万円〜 |
必要工具 | 柔らかいマイクロファイバーウエス3枚以上(インナー専用に分ける)/懐中電灯かスマホのライト/2000番の耐水ペーパー/平らなゴムブロック(当て木)/防錆浸透オイルスプレー/メタルポリッシュ/ゴム部品に使える潤滑スプレー(CCI製メタルラバー等) |
対応バイク | テレスコピックフォークの車両全般(正立・倒立とも)。見る場所が正立と倒立で逆になるので後述 |
ショップ依頼推奨度 | 目視点検と拭き取りはDIYで十分。摺動面の点サビとオイル滲みが出ていたらショップ推奨 |
ミツキ視点 | うちは倒立2台と正立1台。汚れが溜まる位置が真逆なので、車体ごとに見る高さを変えている |
準備物と作業スペースの条件はこれだけです。
- 平地で、車体をまっすぐ立てられること(メンテナンススタンドがあれば前輪を浮かせるとさらに見やすい)
- 手元が明るいこと。斜めから光を当てないと点サビは影にならず見えない
- 作業前にフロント周りの砂を水で流しておくこと
作業手順
- 準備: 平地で車体をまっすぐ立て、エンジンとブレーキが冷めた状態にする。フロントフォーク周りの砂と泥を先に水で流しておく。
ポイント: 乾いた砂が乗ったまま拭くのがいちばんダメ。自分の手で縦傷を入れることになります。 - 露出している側を確認する: 正立フォークはインナーチューブが上側、倒立フォークはインナーチューブが下側に露出している。自分の車体がどちらかを先に把握する。
ポイント: 倒立は飛び石を直接受ける位置、正立はダストシールの上に泥が積もる位置。うちだとSuzuki GSX-8Rが倒立で下側、Honda Cross Cub 110が正立で上側です。同じ「フォークの点検」でも、車体ごとに見る高さが変わります。 - 全周を目視する: 露出部を、光を斜めから当てながらぐるっと一周見る。フォークを伸ばした状態と、ブレーキを握って車体を押し沈めた状態の両方で確認する。
ポイント: 点サビは真上から見ると見えません。光を寝かせると影ができて初めて浮き上がる。指の腹で撫でて引っかかりを探すのも有効です。 - 拭き取る: 柔らかいマイクロファイバーウエスで、露出部の全周を上下方向ではなく周方向に軽く拭く。
ポイント: 外装を拭いたウエスは砂を噛んでいることがあるので、インナーチューブ用は必ず別の1枚を用意する。ここをケチると傷が増えます。 - ダストシールの縁を見る: アウターチューブの端にあるダストシールの縁に、泥の輪やオイルの黒い滲みが残っていないかを確認する。
ポイント: 長年動かしていないダストシールを無理にズラすのは避ける。清掃のために持ち上げるのは倒立フォークで、状態が分かっているときだけにしておくのが安全です。 - 浅い点サビだけ落とす: 2000番の耐水ペーパーを平らなゴムブロックに当て、防錆浸透オイルスプレーを吹きながら軽く研磨する。そのあとメタルポリッシュを塗ってウエスで磨く。
ポイント: 摺動面(オイルシールが当たる範囲)まで達している点サビは自分で触らない。そこを削ると自分でオイル漏れを作ります。摺動面のサビはインナーチューブ交換か再生ハードクロームメッキ処理の領域です。 - 油分を整える: 最後に余分な油分を拭き取り、オイルシール部分にはゴム部品に使える潤滑スプレーを少量だけ吹く。
ポイント: 油を残すとホコリを呼び、そのホコリが湿気を抱えてまたサビます。「塗る」より「拭き残さない」ほうが大事。
よくある失敗と回避策
- 砂を噛んだウエスで拭いて縦傷を入れる: 外装を拭いた同じウエスでインナーチューブまで拭いてしまう → 回避策: 先に水で砂を流し、インナー用のウエスを別に1枚用意する
- 摺動面の点サビを自分で削ってオイル漏れを作る: 「サビだから落とせばいい」と摺動範囲まで研磨してしまう → 回避策: シールが当たる範囲は触らない。そこに出ていたらショップに持ち込む
- 潤滑剤を吹きすぎてホコリを呼ぶ: シール周りにスプレーを大量に吹いて、そのまま拭かずに放置する → 回避策: ゴム部品対応品を少量だけ。余分は必ず拭き取る
仕上げ・確認
作業が終わったら、フロントブレーキを握って車体を2〜3回押し沈めます。戻りにコツンという引っかかりがないか、動きが渋くないかを手で確かめる。
そのあと、アウターチューブとインナーチューブの境目を見てください。油の輪が出ていたらオイル漏れです。ブレーキ側に回る可能性がある場所なので、見つけた時点でその日は乗らず、ショップに連絡する判断でいいと思います。
次回に向けたメモも残しておきます。予防はほぼこれ1つで、洗車のたびに外装を拭いたあと、別のウエスでインナーチューブを一周拭く。汚れとホコリの堆積が湿気を呼んでサビが始まるので、堆積させないだけで発生の確率がぐっと下がります。カウル付きの車体は内側に汚れが溜まって見えないので、そこだけは意識して覗き込む。
雨の中を走った日は、翌日にもう一度見る。これで十分です。
まとめ
インナーチューブの表面は、メーカーが摩擦と耐久性のために作り込んだ層です。銀は硬質クロムメッキ、金はチタンコーティング、黒はDLCコーティング。どれも「削れたら戻らない」という点では同じ。
だから、覚えることは2つでいい。外装用とは別のウエスを1枚用意すること。光を斜めから当てて全周を見ること。この2つだけです。
朝の低い日差しがフォークを舐める時間帯にしゃがむと、金属の表面って驚くほど正直に見えます。あの3つの黒い点も、真上からは最後まで見えていませんでした。
📝 参照元
よくある質問
フロントフォークの金色や黒色のインナーチューブは何が違うのですか?
表面処理の違いです。金色はチタンコーティング(PVD処理)で、表面硬度が硬質クロムメッキの2〜3倍あり摩擦抵抗も下がります。黒色は多くがDLCコーティングで、潤滑性と耐摩耗性でチタンを上回るとされます。
インナーチューブの点サビは自分で落とせますか?
浅いものなら2000番の耐水ペーパーを平らなゴムブロックに当て、防錆浸透オイルを吹きながら軽く研磨できます。ただしオイルシールが当たる摺動面まで達している点サビは自分で触らず、ショップに相談してください。
インナーチューブの点サビを防ぐにはどうすればいいですか?
洗車のたびに、外装を拭いたウエスとは別の1枚でインナーチューブの露出部を一周拭くのが最も効きます。汚れやホコリの堆積が湿気を呼んでサビが始まるためです。カウル付きの車両は内側に汚れが溜まりやすいので特に注意します。
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執筆・編集: GARAGE 3 編集部
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